「わ」「を」「ん」で始まる単語のアクセント
「H」は高い音程、「L」は低い音程、「\」は核を表す。
一音節の単語のカッコ内は、伸ばして発音するときのアクセント型である。
(近世近畿・紀州龍神・阿波・土佐)は、
現在の近畿中央部(京都南部~大阪北部)で失われた(単語によっては現存している場合もある)アクセントを示している。
近畿中央部におけるアクセント区別の一部崩壊は概ね近世辺りに生じたとされ、
特に現代の近畿本土では殆どの地域が近畿中央部と同様の状態に移行している。
(男・女など名詞の従来形は大阪南部や神戸を含め、近畿中央部以外での保存度が高いとも言われている。)
一方で、現在の和歌山県旧龍神村近辺・徳島県沿岸部・高知県中東部では
その従来アクセントが概ね強く保持されている(特に高知県中部)為、
この表記とした。
単語 | 元表記など | 品詞 | アクセント | 備考 | 用法解説 |
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-ん | 助動 | H/L | 未然形①に接続する場合はH、未然形②に接続する場合はL | 未然形①・未然形②に接続して否定形を作る。 | |
-んだ | 連語 | LL | 「-ぬ」の古い連用形「-に」に、過去の助動詞「た」が接続され、撥音便化・連濁化したもの。「死んだ」と同じ構造。和歌山県山間部・三重県などに限定される。大阪府摂津地方でも近年まで用いていた。 | ||
-んで | LL | 「-ぬ」のテ形。「死んで」と同じ構造。 | |||
-んとく | 連語 | HHH | 動詞の未然形①を受けて、「~せずにおく」という文意を作る。例:「食べんとく」 語源は未詳。「食べんで」+「おく」という解釈では、「と」が静音であることを説明できぬ。 | ||
-んならん | 連語 | HLLL/LLLL | 強勢形はHLLL | 「せなならん」の砕けた形。 | |
ワ | 和 | 名 | H(HH) | 伸ばすことで、加算の解であることを強調する。 | 「坂本くん、関数-エフエックスと-ジーエックスの-和は-なんぼや?」HHHHLL、HHHL-LLHHLLL-HHHHLLL-HHH-LLHL? |
わ | 終助 | L | 近畿日本語には男女差がほとんど無いため、男女ともに用いる。 | ||
ワ | 和 | 名 | L(LH) | 日本にまつわるものごと。「和のテイスト」「コンセプトは和です」 | |
わ | 輪 | 名 | L(LH) | ||
ワカ | 和歌 | 名 | HL | ||
わが | 我が・吾が | 連体 | LH | ||
わかい | 若い | 形 | HLL | ||
わかつ(・わかたん) | 別つ | 五段 | HHH・HHHH (近世近畿・紀州龍神・阿波・土佐)HLL・HHLL | ||
わがはい | 吾輩 | 代 | LLLH | ||
わかめ | 若布 | 名 | LHL | HLLもよく聞かれる(昔から揺れている。。。?) | |
わかもの | 若者 | 名 | LLLH | ||
わかりみ | 解りみ | 名(俗) | HHHH | ||
わかる・わからん | 分かる | 五段 | HHH・HHHH (近世近畿・紀州龍神・阿波・土佐)HLL・HHLL | ||
わかれる・わかれん | 分かれる | 下一段 | HHHH (近世近畿・紀州龍神・阿波・土佐)HHLL | ||
わき | 脇 | 名 | HL | ||
わく・わかん | 湧く | 五段 | HH・HHH | ||
ワク | 枠 | 名 | HL | ||
ワク | 枠 | 名 | HL | ||
ワクセイ | 惑星 | 名 | HHHH | ||
わけ | 訳 | 名 | LH | 東京式の影響によりHLも多く聞かれる(「訳分かれへん」よりも「そんな訳」などのタイミングで出現傾向高) | |
わける・わけん | 分ける | 下一段 | LLH (近世近畿・紀州龍神・阿波・土佐)HLL | ||
わこ | 和子・若子 | 名 | HL | ||
わこうど | 若人 | 名 | HHLL/LHLL | HHLLは強勢形 | |
わざ | 技 | 名 | HL | ||
わさび | 山葵 | 名 | HLL | 元来は東京式と同じHLLだが、近年は山型化したLHLが主流 | |
わし | 鷲 | 名 | HL | HH | |
わし | 儂 | 代 | LH | HHも聞かれる(土佐の老年層) | |
わずか | 僅か | 形動・副 | LHL | ||
わせ | 早稲 | 名 | LH | ||
わせりん | ワセリン | 名 | LLLH/LHLL | 若年層はLHLL優勢か | |
わた | 綿 | 名 | HL | ||
わたくし | 私 | 代 | LLLH | 派生形(あたくし)も同様 | 本来はHHHHであるが、広域で揺れている |
わたし | 私 | 代 | LLH | 派生形(わたい・あたし・あたい)も同様 | 本来はHHHであるが、広域で揺れている |
わたす・わたさん | 渡す | 五段 | HHH・HHHH | ||
わたる・わたらん | 渡る | 五段 | HHH・HHHH | ||
わて | 代 | LH | |||
わな | 罠 | 名 | HL | 京都などではLHとも。 | |
わに | 鰐 | 名 | HL | ||
わに | 鰐 | 名 | HL | ||
わや | 名 | HL | 台無し。 | ||
わら | 藁 | 名 | LH | 大阪などではHLとも。 | |
わらいごえ | 笑ひ声 | 名 | HHHHL | ||
わらう・わらわん | 笑ふ | 五段 | HHH・HHHH | ||
わらかす・わらかさん | 笑かす | 五段 | HHHH・HHHHH | ||
わらじ | 草鞋 | 名 | LLH | ||
わり | 割 | 名 | HH | ||
わりあい | 割合 | 名 | HHHH | ||
わりことし | 悪い事し? | 名 | HHHHL | 土佐弁 | いたずらっ子、腕白小僧、ワルサをする子供の意。 |
わりと | 割と | 副 | LLH/HHH | HHHは強勢形 | 「割に」の誤りであるが、本来の「割に」が廃語になった現在では、事実上正式な口語である。 |
わる・わらん | 割る | 五段 | HH・HHH | ||
わる | 悪 | 名(俗) | LH\ | ||
わるい | 悪い | 形 | HLL | ||
われ | 割れ | 動名詞 | HH | ||
われ | 割れ | 動名詞 | HH | ||
われ | 我 | 代・間助(俗) | LH | 土佐ではHH? | 河内地方・和泉地方で、俗に間投助詞として用いられることがある。「今日はなあ我、教授が実習する言いはったよってなあ我、第二実験室に行かなあかんど我」 |
われ | 我・吾 | 名 | LH | ||
われる・われん | 割れる | 下一段 | HHH | ||
われわれ | 我々 | 代 | LLLH/LHLL | LHLLは強調形 | |
を | 格助 | H | |||
んか | 連語(俗) | LH | 「くれんかHLLH」の略であるため、直前の「て」を遅上がりさせる。 例:「食べてLLH」+「んかLH」→「食べてんかLLLLH」 | 「くれんか」の略。用法も「くれんか」とほぼ同じ(やや柔和)。「たこ焼き焼いてんけど、良かったら食べてんか!」 | |
単語 | 元表記など | 品詞 | アクセント | 備考 | 用法解説 |