甲種日本語アクセント辞典


甲種日本語アクセント辞典

  甲種日本語アクセント辞典へようこそ。
  本辞典は近畿圏および四国圏の大部分また北陸圏の一部に分布する日本語で用いられる、
  いわゆる「甲種アクセント」「京阪式アクセント」「第一種アクセント」と呼ばれるアクセントの体系を示した辞典です。

  世間一般では「関西系イントネーション」「関西弁の発音」などと呼ばれているものと思って頂けると分かりやすいかと思います。

  (ちなみに東京圏や、テレビアナウンサー等が用いる日本語のアクセントは「乙種アクセント」「東京式アクセント」「第二種アクセント」と呼ばれています。)

  非母語話者(甲種アクセントが用いられていない地域の日本語の話者)の方は、
  移住や交流を深める際の習得を目指した学習資料として

  母語話者(甲種アクセントが用いられている地域の日本語の話者)の方は、
  自らが用いているアクセントの「振り返り」としてご活用頂けたらと思います。

  ※当Webページは、辞典の第一編纂者及び起草者である坂本小見山氏による「近畿日本語アクセント辞典」を元に複数の語彙及び拡張的コンテンツを追加し、
  Webページとして再構成したものです。

  最終更新日:令和3年8月29日(本編収録単語数:4870)
(以下索引よりコンテンツをご覧頂けます。)

 TOP 
 あ   か   さ   た   な 
 は   ま   や   ら   わ 
 その他 

活用形とアクセント

ここでは動詞・形容詞の活用形とアクセントについて他エリアの日本語アクセントと比較して紹介する。


五段活用の動詞近畿型A群近畿型B群九州型A群九州型B群
接続する単語HH(押す)HHHH(頂く)HHH(戻す)LLH(均す)LLLH(吐き出す)LH(刺す)
未然形①ぬ、ん、せる、れるHHHHHHHHHLLLLLLLLL
未然形③HHHHHHHHHLLHLLLHLH
未然形②へん、んHL、HHHHHLHHLLHLLLHLLH
連用形①たい、ます、て(で)HHHHHHHHHLLHLLLHLH
連用形②て(で)、た(だ)HLHHHLHLLLHLLLHLLL
終止形・連体形HHHHHHHHHLLHLLLHLH
仮定形ば、どもHLHHHLHHLLHLLLHLLH
命令形HLHHHLHHLLHLLLHLLH
(可能動詞)HHHHHHHHHHHHLLLHLLLLHLLH
備考HHHHHなども同様。LLLLHなども同様

上一段・下一段・サ行変格活用の動詞近畿型A群近畿型B群九州型A群九州型B群九州型C群
接続する単語HHH(やめる)HHHH(数える)HH(寝る)LLLH(支える)LLLLH(取り付ける)LH(見る)LLH(食べる)
未然形①ぬ、ん、させる、られるHHHHHHLLLLLLLHLL
未然形③ようHHHHHHLLLLLLLLLL
未然形②へん(ひん)、んHL、HHHHL、HHHH(HL)LHLLLHLH(HL)LH
連用形①たい、ます、てHHHHHH(HH)LLHLLLHH(HH)LH
連用形②て、たHLHHLHLHLLLHLHLH
終止形・連体形HHHHHHHHHLLLHLLLLHLHLLH
仮定形ば、どもHHLHHHLHLLLHLLLLHLLHLHL
命令形ろ、い、よHHHHHHLLHLLLHHLH
(ラ抜き)HHHHHHHHHHHHLLLLHLLLLLHLLHLLLH
備考HHHHHなども同様LLLLLHなども同様
命令形はHLになることもある。

カ行変格活用の動詞接続する単語LH(来る)
未然形①ぬ、ん、させる、られるH、L
未然形③ようH
未然形②へん(ひん)、んH(HL)、L
連用形①たい、ます、てH
連用形②て、たH
終止形・連体形LH
仮定形ば、どもHL
命令形H
(ラ抜き)HHH
備考

解説(動詞)


形容詞九州型近畿型B群近畿型C群近畿型A群
活用語尾LH(無い)HL(濃い)HLL(高い)HHLL(正しい)HHHLL(温かい)
未然形かろHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH
連用形かっ・く・うHLHLHHL/LHLHHHL/LLHLHHHHL/LLLHL
終止形・連体形LHHLHLLHHLLHHHLL
仮定形けれHLLHLLHHLLHHHLLHHHHLL
命令形かれHHLHHLHHHLHHHHLHHHHHL
名詞形LHHLLHLHHHLHHHHL
HHHHHHHHHHHHHHHH
備考カリ活用は、過去形以外はおおむね五段HHH型に類似。カリ活用は、過去形以外はおおむね五段HHHHに類似。
HHHHLLなども同様。

形容詞のイレギュラーな例「おいしい」
活用語尾LLHL(おいしい)
未然形かろLLLLH
連用形かっ・く・うLLHL
終止形・連体形LLHL
仮定形けれLLHLL
命令形かれLLLHL
名詞形LH
HH

解説(形容詞)

複合語、挨拶等

ここでは複合語や挨拶のアクセントを地域差を交えて紹介する。


数字を1から10まで連続で数えるときのアクセント
いち・にい・さん・しい・ごお・ろく・しち・はち・くう※・じゅう
HL・LH・HH・LL・HH・HL・HL・HL・HH・LH
※きゅう(HL/HH)も聞かれる

数字単体(連続で読まない場合)のアクセント
数字漢語・外来語読み(単位なし)-番、-枚、-台-キロ-円
0ぜろ、れいHL、HL(ぜろ)LHLL(ぜろ)LLHLLHLL、HLLL
1いちHLHLLLLLHLLHLL(従来アクセントはHLLLか?)
2LH(2拍で発音)LLHLHLHLL
3さんHHLLLHLLHLLHLL
4し、よんLH(2拍で発音)、HL(よん)HLLLLLHL、HLLL(よえん)HLL
5HH(2拍で発音)HHHLHLHLL
6ろくHLHLLLLLHLLHLL(従来アクセントはHLLLか?)
7しち、ななHLHLLL(ななきろのみ)LLHL、HLLLLHLL(従来アクセントはHLLLか?)
8はちHLHLLLLLHL(はっきろでも同様)LHLL(従来アクセントはHLLLか?)
9きゅう、くHL、HH(2拍で発音)(きゅう)HLLL(きゅう)LLHL(きゅう)HLLL
数字漢語・外来語読み(単位なし)-番、-枚、-台-キロ-円
10じゅうLHHLLLLLHLLHLL
20にじゅうHLLHLLLLHLLLLHLLLL
30さんじゅうLHLLLHLLLL、LLLHLL、HHHHLLLHLLLL、LLLLHLLHLLLL、LLHHLL、HHHHLL
40よんじゅうHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
50ごじゅうHHL、HLLHHHLL、HLLLLHHLLL、HLLLL、LLLHLHHHLL、HLLLL
60ろくじゅうHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
70ななじゅうHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
80はちじゅうHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
90きゅうじゅうHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
数字漢語・外来語読み(単位なし)-番、-枚、-台-キロ-円
100ひゃくHLHLLLLLHLLHLL
200にひゃくHHLHHHLLHHHLL、HHHHLHHHLL
300さんびゃくLHLLLHLLLL、LLLHLL、HHHHLLLHLLLL、LLLLHLLHLLLL、LLLHLL、HHHHLL
400よんひゃくHLLLHHHHLL、HLLLLLHHHHLL、HHHHHL、HLLLLLHLLLLL、HHHHLL
500ごひゃくHHLHHHLLHHHLL、HHHHLHLLLL
600ろっぴゃくHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHLHHHHLL
700ななひゃくHLLL、HHLL、LHLLHHHHLL、HLLLLLHHHHLL、HHHHHLHLLLLL、HHHHLL
800はっぴゃくHHHLHHHHLLHHHHLL、HHHHHL、HLLLLLHHHHLL
900きゅうひゃくHLLLHHHHLL、HLLLLLHHHHLL、HHHHHL、HLLLLLHLLLLL、HHHHLL
数字漢語・外来語読み(単位なし)-番、-枚、-台-キロ-円
1000せんLHLLLH、LHLLLLHL、LHLLLHLL
2000にせんLHLLLLLH、LLHLLLLLLHLLHLL
3000さんぜんLLHLLLLLLH、LLLHLL、HHHHLL、HHHHHHLLLLLHLLHLLL
4000よんせんHLLLHHHHLL、HLLLLL、HHHHHHHHHHHHHLLLLL、HHHHLL
5000ごせんLHLLLLLH、LLHLLLLLLHLLHLL
6000ろくせんHLLLHHHHLL、HLLLLL、HHHHHHHHHHHHHLLLLL、HHHHLL
7000ななせんHLLLHHHHLL、HLLLLL、HHHHHHHHHHHHHLLLLL、HHHHLL
8000はっせんLLHLLLLLLH、LLLHLL、HHHHLL、HHHHHHLLLLLHLLLHLL
9000きゅうせんHLLLHHHHLL、HLLLLL、HHHHHHHHHHHHHLLLLL、HHHHLL
数字漢語・外来語読み(単位なし)-番、-枚、-台-キロ-円
10000いちまんHHHLHHHHHHHHHHHHHHHHLL
20000にまんHHLLLLLHLLLLHLLHLL、HHHLL
30000さんまんLLHL、HHLL、LHLLLLLLLHLLLLLHLLLHLL、HHHHLL、LHLLLL
40000よんまんHHHL、HLLLHHHHHHHHHHHHHHHHLL、HLLLLL
50000ごまんHHLHHHHHHHHHHHHHLL
60000ろくまんHHHL、HLLLHHHHHHHHHHHHHHHHLL
70000ななまんHHHL、HLLLHHHHHHHHHHHHHHHHLL
80000はちまんHHHL、HLLLHHHHHHHHHHHHHHHHLL
90000きゅうまんHHHL、HLLLHHHHHHHHHHHHHHHHLL
100000じゅうまんHHHLHHHHHH、LLLLLHHHHHHH、LLLLLHHHHHLL

挨拶のアクセント
挨拶京都・大阪高知補足1補足2
こんにちはLHLLH/HHLLHHHLHL/LHLHL  ※※近年は近畿と統一傾向あり
おはようLLHL/LLLH
こんばんはLHLLH/HHLLH
ありがとうLLLHLHLLHL
ごめんなさいLLLHLL
ごめん類ごめん(LHL/LLH)、ごめんね(LHLH)、
ごめんやで(LLHLL)、ごめんて(LLHL)、
ごめんよ(LLLH)、ごめんで(LLHL)、
ごめんちや(LLHLL)、ごめんって(LLHLL)
④は近畿のみ、⑤は四国的表現?、
⑥・⑦は純土佐的表現、
⑧は土佐弁の近畿化
(=若年層を中心に「ちや」が「って」に置き換わる傾向)
に伴い生まれた新しい形
土佐弁は「やで」に相当する
言い回しに「で」が用いられる
(③と⑥は用法的に同一)
すいません類LLLHH/LLLLHすみません、すんません、すんまへん等も同様
さようならHLLHL近畿はさよなら/さいなら(HLHL)の方が多用傾向?
おめでとうLLLHLLLLHL/LLLHH

苗字アクセントの揺れ・移行例

苗字のアクセントは近年、共通語化に伴いアクセントが別の形へ
移行しつつあるものが多い。ここでは古形アクセントが多く残る
土佐弁使用地域で聞かれるものをベースに紹介する。


平板に移行しつつあるもの
苗字漢字表記元来のアクセント新アクセント参考:東京式
さかもと◆坂本、阪本などHLLLHHHHLHHH
しばHLHHLH
わだ和田HLHHLH
◆接客等で意識的に東京式の真似をした場合にLHLLというアクセントが発される事がある(本来の東京式はLHHH平板)

第2拍アクセントに移行しつつあるもの★
苗字漢字表記元来のアクセント新アクセント参考:東京式
いちかわ市川HLLL(HHLL→)LHLLLHLL
しまさき島崎、嶋﨑など
たのうち田内
やまさき山崎、山崎など
よしおか吉岡
★若年層はおおよそLHLLへ移行済

一方で、共通語化とは関係なく独自にアクセントが移行しつつある例も存在する(共通語化とは異なる山型化現象)。


独自に山型アクセントへ移行しつつあるもの
苗字漢字表記元来のアクセント新アクセント参考:東京式
かどた門田LLHLHLHLL
たぶち田渕、田淵などHLLHLL
てらだ寺田LLHLHH
はまだ▲浜田、濱田などHLLHLL
たなか△田中LLHLHH
▲近畿圏は全世代山型アクセントへほぼ移行済み。
△大阪における変化。高知や京都ではあまり聞かれない。



人を呼ぶ際の敬称アクセント

ここでは人を呼ぶ際の敬称のアクセントを紹介する。


名前の後ろが高いアクセントの場合(例:【LLH】岡田くん、岡田さん、岡田はん)
敬称高知大阪
-くんLLH-LL
-さんLLH-LLLLL-HH
-はん(該当語彙なし)LLL-HH

名前が平板アクセントの場合(例:【HHHH】坂本くん、坂本さん、坂本はん)
敬称高知大阪
-くんHHHH-LL
-さんHHHH-LLHHHH-HH
-はん(該当語彙なし)HHHH-HH

名前の後ろが低いアクセントの場合(例:【HLL】横井くん、横井さん、横井はん)
敬称高知大阪
-くんHLL-LL
-さんHLL-LL
-はん(該当語彙なし)HLL-LL

原則「-くん」のアクセントは下がる。
「-さん」のアクセントは地域差が見られる。

但し、実在しない人物あるいはキャラクターの場合、アクセントは異なる(地域差なし)。
カピバラさん(LLLL-HHあるいはHHHH-HH)
からあげクン(LLLL-HHあるいはHHHH-HH) など

他に例を挙げると、
闇金ウシジマくんの「ウシジマくん」は
HHHH-HH であるが、
自分自身の知り合いに「うしじま」という苗字の人が居たらその人を呼ぶ時は
HHHH-LL である。

3拍単語アクセントの山型化現象

甲種アクセント式日本語が用いられる地域において、
三拍単語のアクセントが「山型化」する現象が多く発生している。
山型化とは、元々のアクセントがHLL、HHL、LLHであったもの
(特に頭高アクセントHLLの単語)がLHLへ移行する現象を指す造語である。

おおむね日常的に身近であるものほど山型化傾向が強く、
地域や世代によって現象の浸透度合いに差が見られる。
一般的には老年層ほど山型化傾向は弱く、若年層ほど山型化は顕著であり、
山型化アクセントの使用頻度の高さは「若者らしさ」を示す一指標と言えよう。
以下に代表的な単語の一覧表を示す。


表. 山型化傾向にある単語
あ行余り、新た、幾つ幾ら、インド
か行外部、カメラ、カラス下品、ゴリラ
さ行数字、修理、準備、せめて、全部
た行タヌキ、多分、テレビ、土日、トマト
な行長居、なすび
は行バナナ、ハワイ、、婦警、二人
ま行、眼鏡
や行八重歯
ら行ラジオ
わ行わかめ、わさび
黒色は元々HLL、緑色は元々HHL青色は元々LLHであるものを指す。

*インドやハワイなどの海外地名は、山型化傾向はあるものの、地域全体としての移行度は低い(大阪北部は移行度が高い。更に言えば、大阪北部はその他の単語も含め全体的な移行度が高い傾向)。
*眼鏡やトマトなど少なくとも昭和20年代辺りには既に浸透している単語は老年層においても山型化アクセントへの移行率が高い(若年層はほぼLHLに移行済みである)。
*テレビ、バナナなど社会的浸透が比較的新しい時代の外来語は、世代差が大きい。中年層は親世代における浸透率が低いあるいは幼少期にこれらが身近でなかった人も多い為か、アクセントのバラツキが大きい(若年層はほぼLHLに移行済みである)。
*幾ら、多分、わかめ、わさび等は若年層の間でもアクセントの揺れが比較的大きい。

比較的新しい時代に生まれた4拍単語のアクセント変化

近畿・四国等において、比較的新しい時代に生まれた4拍単語は、
概念が流入した当初に使われていたアクセントと異なる方向に変化する事がある。
単語によってアクセントの変化度合いに地域差・世代差が存在するが、
概ね変化は近畿日本語アクセント圏全体で同様に起こっている。

これは3拍アクセントの山型化と同様の現象と思われ、
甲種日本語アクセント圏独自のものである。
以下に一例を紹介する。


第2拍型単語元表記など従来アクセント新アクセント補足
がそりんガソリンLLLHLHLL
かんくう関空
きんてつ近鉄「近鉄」は主にLHLLだが、沿線外ではLLLHも聞かれる
そつけん卒研(卒業研究)
そつけん卒検(自動車学校の卒業検定)
そつろん卒論「卒論」は中年層以上ではLLLH、若年層はLHLL
だいがく大学HHHHも聞かれる
ちかてつ地下鉄
わせりんワセリン

第3拍型単語元表記など従来アクセント新しいアクセント補足
こうこう高校LLLHLLHL
まぜそば混ぜそば焼きそば(LLHL)との統合か。
徳島では変化型の使用が顕著で、
高知では従来型が強く残る。

全体的な傾向としては、
・世代が下がるほど新アクセント化傾向が強い
・生活定着度が高い(馴染みが深い)ほど新アクセント化傾向が強い
・言語的変化の著しい京阪圏と地理的に近いほど新アクセント化傾向が強い
の以上3点が挙げられるが、
あくまで全体的な傾向を示すものであり、必ずしも一様ではない事に注意されたい。